この世の全ての真実が明らかにされなければならないとは私も思わない。ことさらに真実を捻じ曲げたり、ことさらに表裏背反するような虚偽を並べることは極力避けるべきだが、守るべきもののために触れられないでおかれることもあってもよいと思う。
しかし、世界を救うかもしれない技術が権力や利権によって葬られ、あるいは秘密裏に悪用されて軍事目的などに転用されるとしたら、それは恐ろしい。 天動説が定説の時代に地動説を唱えたガリレオ・ガリレイが迫害されたのは、よく知られているが、本書では、交流電流、リモコン、無線、ラジオ、電気モーター、電気信号を二進数で命令するデジタル原理などを発明し、現在インターネットで実現しているような音声や映像などの送信を思いついた天才ニコラ・テスラが強いられた不遇な境遇と、その技術が気象・地震兵器として使われている可能性などを米国の軍事文書などを基に指摘する。
元『日経ウィークリー』記者・元『フォーブス』支局長の著者の取り扱う分野は多岐にわたり、科学・歴史・宗教・政治・経済・社会の諸問題、さらには薬物等による神秘体験のようなものにまで及ぶ。こういう宗教やオカルトにまで及ぶ話や時折みられる誇張や飛躍、唐突な例えなどが、全てを額面通りに受け取ることを躊躇させるが、看過出来ない重要な事実、真実を含んでいることは否定できない。英文著作もあり、そういう意味では、「マルチ・リンガルな立花隆」的ジャーナリズムといってよいかもしれない。
また、権力や利権の構造に踏み込み、世界や日本の暗部に踏み込みながら、身の安全が確保できているのは著者の著作が上記したような点で、ある種の狂気を含んでいるとみなされていることにもよるのかもしれない(著者のいくつかの著作には、権力や利権の闇に迫ろうとした政治家やジャーナリストが殺されたり不審死を遂げるという実例が時折実名で紹介されている)。
私たちが普段見聞きしている現実は、もしかしたら、そのように見聞きすることを強いられているだけかもしれない、別の側面もあるかもしれない、別の真実もあるかもしれない、私たちが信じている法則はもしかすると天動説のような一時代の価値観にすぎないかもしれない、ということはときどき考えてみる必要があると思う。