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闇の奥
 
 

闇の奥 [単行本]

辻原 登
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

太平洋戦争末期、北ボルネオで気鋭の民族学者・三上隆が忽然と姿を消した。彼はジャングルの奥地に隠れ住むという倭人族を追っていたという。三上の生存を信じる者たちによって結成された探索隊は調査をすすめるうち、和歌山からボルネオ、チベットへと運命の糸に導かれていく。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

辻原 登
1945年、和歌山県生まれ。1985年「犬かけて」でデビュー。90年「村の名前」で第103回芥川賞受賞。99年『翔べ麒麟』で第50回読売文学賞、2000年『遊動亭円木』で第36回谷崎潤一郎賞、05年「枯葉の中の青い炎」で第31回川端康成文学賞、06年『花はさくら木』で第33回大佛次郎賞、10年『許されざる者』で第51回毎日芸術賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 単行本: 283ページ
  • 出版社: 文藝春秋 (2010/04)
  • ISBN-10: 4163288805
  • ISBN-13: 978-4163288802
  • 発売日: 2010/04
  • 商品の寸法: 19.2 x 13 x 2.6 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 3.5  レビューをすべて見る (6件のカスタマーレビュー)
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形式:単行本
 初出時に「イタリアの秋の水仙」だったタイトルは「闇の奥」に改題された。「闇の奥」と言えば、アフリカ奥地を舞台に西洋文明の暗黒面を描いたジョゼフ・コンラッドの古典的名著が思い出される。コッポラ監督がここからベトナム戦争を背景に「地獄の黙示録」という新たな作品世界を描いたように、著者もまた、独自の世界を構築しようという難題に果敢に挑んだ1人のようだ。
 太平洋戦争末期、矮人族(ネグリト)と呼ばれる小人を探し、ボルネオで消息を絶った民族学者の後を追う物語。戦後まもない時期から現在(2009年)に至るまで、和歌山からボルネオ、雲南、チベットへと舞台は広がりながら、5次にわたる捜索劇が繰り広げられる。「和歌山毒物カレー事件」などの史実を織り交ぜ、時には実際の新聞記事を引用するなど、虚構と現実の世界を往復しながら、読者を作品世界に引きずり込む手法はお見事。次第に実際の出来事ではないかとの錯覚にさえ陥った。
 息もつかせぬ冒険譚。
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11 人中、10人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
愉楽 2010/5/23
By トップ500レビュアー
形式:単行本
あるとき、怖れにとらえられた。これが未来の観念となる。
それより一瞬遅れて、なつかしさにとらえられた。これが過去の観念になった。
この二つの観念に引き裂かれた瞬間、それが現在となった。

ポルトガルのピアニスト、マリア・ジョアン・ピリスはポルトガル語に他の言語に訳せない「サウダーデ」という言葉がある。という。
時間の観念の発生以前のえもいわれぬ虚の感情。誰か大切な人が、物がない。不在が、淋しさと、憧れ、悲しみをかきたてる。と同時に、それが喜びとなる。
数学者の岡潔のいうなつかしさと発見の鋭い喜びの情緒。万葉集、新古今和歌集あたりまでの体感を伴った強い感情とでもいうべきもの。
時間感覚を伴ってやってくるノスタルジアとは質的に異なる。

この本の主人公、三上隆もこのなつかしさにかきたてられ矮人伝説を追ってボルネオ、雲南、東チベットへと旅をつづける。(2004年、インドネシアのフロレス島で約18、000年前の地層から身長約1mの小人族が見つかった)

この小説の通奏低音は現実と空想、この世とあの世がまるで重ね合わせのようになっていて空想が現実をつくる。(何かに集中すれば、それに関するものが向こうからやってくる)そして、その時、胸の中は喜びで沸騰し猛烈ななつかしさを体験する。

この本は三上隆を探し求める者たちの物語である。
著者は類希なストーリーテラーでもあるので、一気に読ませ考えさせる。
記憶と感情と時間に興味をお持ちの方に勧める。
このレビューは参考になりましたか?
4 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本
こんな香しいロマンを紡げる作家は、今の日本に辻原氏以外にいるでしょうか!
この香しさは、水仙の高貴な香りと、アジアの密林の生臭いラフレシアの腐臭とを併せ持っています。
大戦末期にボルネオの密林で消息を絶った、蝶採集家でもある民俗学者。彼はネグリト(アジアの小人)を追い求めていたという。彼の生存を信じるものたちによる幾度もの探索。
あらすじを書こうとしたら、なんか本の帯の文句みたいになっちゃった。
闇の奥、というタイトルに、かの名作を連想する人もいらしゃるでしょう。密林に消えた人物を追い求める、首をちょん切られた人の頭蓋骨が軒下に並んでいる、幾つかの類似点はありますが、似て非なる物語です。だってこっちは同じアジアの地、アジアの民のお話なんですもの。キーワードは、サウダーデなんですもの。(知らない人は調べてね)
4年の歳月をかけて少しずつ書いていった物語なので、話頭はあれこれに及び、ひとつの作品としてのまとまりのなさを感じなくもないのですが、それが作品の疵瑕になっているのかというと、何故か気にならない。大きな物語だからでしょう。
最後は、インディージョーンズみたいな冒険活劇でピッチを上げていくのは、なんとか物語を終わりにしなくちゃいけなかったからかしらん。もしかしたら作者は、もっと書き続けていたかったのかも。
虚が実を生み、実の峰の向こうにまた虚がたちこめて、その果てにまた実が顔を出す。
通奏低音は不思議な言葉、サウダーデ。ただこの言葉がずっと鳴り響いるかというとそうでもなくて、
最後はどっかいっちゃったかなと思っていたら、ラストで「その人」が遠方に見える場面で、
読者自らが「サウダーデ」を体感します。私、本当にうれしさと懐かしさを感じましたもん!
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