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33 人中、32人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
未開人の恐怖という経験,
By sinkiti (神奈川、川崎) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 闇の奥 (岩波文庫 赤 248-1) (文庫)
海外への植民者たちは、従来の社会階層からはじき出された余計ものたちで、その社会から何ら希望も与えられない虚無的な人であった。ところが、海外での帝国主義に従事することが彼らに自己実現の場を与え、新たな希望が生まれる。そして、そこには理想と現実に引き裂かれる陰惨な心理ドラマが生まれるのだ。主人公のクルツは貧乏のせいで婚約者と結婚することもできない。そこで、海外への帝国主義政策を採る貿易会社に入って、お金を稼ごうとした。クルツは順調に出世する。やがて重役に最高の自己アピールをするため、とりわけ困難な土地であるアフリカのコンゴへ赴任を希望した。だが、クルツ自身は帝国主義の大義名分「未開人に文明人のような道徳意識を持たせたい」とその現実「未開人から略奪することが会社の業績になる」とに引き裂かれる。この分裂のせいで、彼は未開人の部族間闘争に身を投じる。はたして彼の運命やいかに。 ところで、彼がその闘争に身を投じたのはもはや婚約者のためでも、出世のためでも、未開人のためでもない。恐怖のためである。恐怖とは何か。それは帝国主義のディレンマを回避するための心的装置である。クルツは自分の葛藤を引き起こす原因となった未開人を否定するために、これを恐怖として/によって烈しく攻撃する。そして、その後ろめたさが未開人の代わりとしての象牙集めという欲望を引き起こす。その象牙は会社経由で市場にのらない限り、価値がないにもかかわらず。 この植民者の心の闇は、じつは全体主義の闇につながっている。
12 人中、12人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
ある航海士の話,
By カナブンとスズメ (空想の世界) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 闇の奥 (岩波文庫 赤 248-1) (文庫)
ヨーロッパ人といわゆる「未開人」の場を設けてヨーロッパ人が考える理念としての帝国主義と 現実としての暴力の帝国主義がよく分かりました。 しかし、人間の心理の奥などとかなり重いテーマが作品の底を流れていると思いました。 かなり難しい作品だと思います。 ちなみに作者コンラッドは自由自在にラテン語を英語にしてしまう技を持っていました。
49 人中、44人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
「白人の責務」の崩壊,
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レビュー対象商品: 闇の奥 (岩波文庫 赤 248-1) (文庫)
二十世紀直前のアフリカ、ベルギー領コンゴ。雇われ船員のマーロウはある交易会社に依頼されて、コンゴ奥地で消息を絶った腕利きの現地支配人クルツの探索に向かうが・・・・。戦争映画『地獄の黙示録』の元ネタになった小説で、コッポラの映画同様、まったく奇妙で脈絡がなく、ただただ粘りつくような「恐怖」の感覚だけが迫る怪作です。 これはヨーロッパの帝国主義のひとつの寓話として読めます。ヨーロッパ帝国主義が体現していた意義や道徳=現地支配人クルツと読み替えて、その帝国主義の崇高な道徳の使者だったはずのクルツがアフリカの奥地でどのような狂気に侵されていったか。著者のコンラッドは実際に船乗りとしてコンゴへ行ったことがあり、そのとき帝国主義の現実に直面した体験がこの小説を書かせたそうです。また、本書全篇にただようある種の崩壊感は、世紀末の一ヨーロッパ人としてコンラッドが感じた深刻な何かだったのかもしれません。 ま、帝国主義に何らかの道徳だの意義があったと(ご当人らはかなり本気で)信じ込んでいたヨーロッパ人が、そんなものはなかったと気づいたときの自己愛的なショックだ、と言えばそうなんですが。日本も帝国主義の経験があるので、我らが祖先がアジアの植民地支配の現場で何を考えていたか、というのも興味はあります。
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