関西電力の原発利権を仕切る若狭支社の幹部Kが、そこに口出しをする高浜町・今井町長を目障りに感じ殺害を計画。そしてその殺害手段は、当時関電が計画していた「警備犬」――まるでミステリー小説のように仕上げられた暗殺計画だ。下請け警備会社の社員・加藤と矢竹の告発を通じ、著者の斎藤氏が取材を重ねていくノンフィクションである。
2011年3月の東日本震災、そして東京電力・福島原発の事故以降、我々の知るところとなった電力会社と原発の利権体質は余りにひどい。その中でもこの事件は最低最悪である。民主主義の原則を根底から覆すテロリズムが後押しされ、その中心には常に原発が闇権力の要塞のようにそびえ立っている。結果的に暗殺は未遂に終わるが、この暗殺計画は関西電力の経営陣、特に元首脳のXと真の黒幕・Hも認識していた可能性が濃厚だという点に不気味さと恐ろしさがある。
だが、本当に原発の闇を知るのは終盤だろう。本書の元になった記事は2008年に「週刊現代」に2週にわたって掲載された。とんでもない計画にも関わらず、後追いするマスコミはほとんどない。それどころか産経新聞・共同通信の記者が奇妙な動きを見せた後、加藤と矢竹が逮捕されるという謎の結末を迎える。これは明らかに報復ではないか。
共同通信記者に渡ったICレコーダーが逮捕の鍵になったとしか思えない。権力を監視するはずの報道関係者が、逆に国家権力の暴走に加担したとするなら本末転倒だ。彼らの目的は何だったのかまったく理解できない。事実に反した裁判を含め、この国の狂った権力構造に暗澹たる気分になった。
現在、電力を巡って激論が交わされ、様々な原発推進論・慎重論が唱えられている。そこで敢えて両方の立場から一歩引き、質問を変えてみたい――「今の電力会社に原発の管理を任せられますか?」。
これならばもう、一致した結論があるように思われる。