著者は桐朋学園で体育を教え、同中高校でバスケット部のコーチをする一方、修験道の世界に世界に身を置く山伏だという。この山伏の身体技法を日常生活の体の使い方に応用して長く健康に動ける体を維持しようという趣旨の本。
筋力に頼った体の動かし方は全身のバランスを崩すため関節などの故障をまねくおそれがある。また、筋力トレーニングは、どうしても全身に600以上ある筋肉のうち、特定の筋肉だけを鍛えることになるので、そこに負荷が集中して故障をまねくことがある。アスリートではない一般の人、特に中高齢者は、筋肉に疲れを感じるほどの負担をかけることは、身体を健康にする効果以上に、身体を壊すリスクのほうがずっと高くなる。
などが、本書の主張。では、どのように体を動かせばいいのかというと、骨と関節を意識して、全身の力を使って運動しろ。ということになる。たとえば何かを手で取るときも、腕の筋肉に力を入れるのではなく、骨格をそこに持って行くというつもりで動けば、肩から先だけではなく鎖骨や肩胛骨などの体幹部までも含めた全身に動きが分散される。
また、身体の整体的メンテナンスは「痛みをコーチに」して自分で毎日できるという。具体的には、「痛気持ちいい」という感覚は「これ以上、痛めつけないで」という身体の叫びだから、痛いところは避けて、痛くないところだけを動かす、痛くない方向にだけ動かすという「逆モーション療法」が紹介されている。
膝痛や腰痛に対処するための体操もいくつか紹介されている。このうち、腰掛けた状態で水平を維持したままの肩を左右に動かし気持ちのいいところで止める、という便秘の体操を実際にやってみたところ、その場で効力が現れたので驚いた。
読者対象としては、肩こりが気になる中年層から、関節痛に悩む高齢者を中心に考えられているようだ。このため、スポーツのためのアドバイスは限られていて、日常生活での身体技法の例が豊富に紹介されている。だが、若年層も関節や筋肉に痛みを感じることはよくあるし、中年以降の痛みの原因が若いころにあることも多い。この本にあるような、関節や骨格を守って身体を故障させない技法を、中高生やその指導者も学んでほしい。