1923年(大正12年)9月1日の関東大震災において、数千・数万の居留朝鮮人が、デマにおびえた日本人によって虐殺されたとされる“伝説”は、日本現代史上の抜きがたい汚点のひとつとされ、今もなお我々日本人に苦い思いと悔恨の念を強いる。
しかし、この“伝説”については、あまりに抜きがたい汚点とされたためか、例によって一種のタブーとされ封印されて、その実態と内実について、我々一般の市民向けの実証的で冷静な研究著作がなかなか入手できないもどかしさがあった。
本書の著者・工藤美代子氏は、このタブーに挑戦し、上記の実証的で冷静かつ地道な研究活動を通じて、この関東大震災『朝鮮人虐殺』と呼ばれた歴史的事件の実態と、ある特定の社会的政治的勢力の戦略によって、その被害者数が意図的に水増しされ、被害実態がより残虐に誇張されていく過程について明白に描き出すことに成功している。この過程はまさに共産中国による“南京大虐殺”といわれる“伝説”の成立・変遷とまったく相似形であることが痛感される。
我々日本人は、エゴのぶつかり合いである国際関係の中で、自らの正当性を主張することが極めて拙い国民であることは度々指摘されているが、こうした弱点を抱えたままでは、韓国・朝鮮・中国のような、何が何でも自己の正当性だけをゴリ押しする国家群に対して、対等に太刀打ちできるわけがない。
我々日本人とはそもそも歴史的・国際的にどのような存在であり、今後、特定アジアの近隣国に対してどのような立場と距離をとって、どのような国家・社会を目指していくのか、そうした我々自身の将来に横たわる課題について、改めて思いを巡らすことが出来る良書である。