本書を読んで改めて、藤波心さんの賢さに感心しました。学力や経験に比例しない、本当の「賢さ」というものがあります。
今回の原発事故を巡って、東電幹部や官僚といった、典型的な日本的エリートの限界が明らかになりました。
日本の技術経営の専門家、山本尚利氏によりますと、日米のエリートの最大の違いは、シナリオ発想力があるかどうかだということです。つまり、何かを成そうとするとき、「上手くいった場合にどうなるか」を想定するのと同時に、「最悪の場合、どのようになるか」というリスクを想定し、その場合の対策も考えておくという事です。
藤波心さんの抜きん出た才能のひとつは、この「シナリオ発想力」かと思います。最悪のケースを踏まえた上で、原発の問題を的確に捉えており、B級アイドルが原発について言及する事のリスクも十分に認識しています。シナリオ発想力は、単に想像力が豊かというのとは違います。
想像力のある日本人はいっぱい居るでしょうが、悪いシナリオを予め考えておくというのは苦手のように思われます。また、性善説にのっとた考え方があり、周りの人達やお上の言う事を、簡単に信用し、従い、悪い事が起きれば自分を責めるという傾向があるように思います。
実際、関西に住んでいる藤波心さんの友人は、原発事故にはまったく無関心だったようです。政府やメディアの隠蔽工作に加えて、5感で捉える事ができない放射能汚染という今回のケースが、日本人をおおきく2つに分けていっているように思えます。
また、唯一の被爆国でありながら、原子力に執着する日本人を、「悪い男に貢ぎ続ける女性」に例えているのが微苦笑させられます。これはまた、日米同盟にも当てはまりますね。
本書はフォトブックのような、ミニ写真集的な体裁で、書かれている文章はそれほど多くはありません。しかし、藤波心さんの誠実さ、良心、芯の強さなどが伝わってきて、さわやかな読後感がありました。