本書が発表されたのは08年11月。論旨に大きな異論はないが、出すタイミングが悪いというか何を今更と思ってしまう。つまり、08年に入ってからも資源価格が高騰を続けたのを見て、「資源価格の需給逼迫によるインフレとハイテク製品のコモディティ化によるデフレの混在」という「仮説」を思い付いたように見えてしまうのである。10年前に言ってくれてれば格好良かったのに。
また、筆者は過去ほぼ6年の円安は「バブル」であり、今後は外貨を稼ぐ輸出主導型の経済モデルは通用しないとも言う。しかしそんなことを言えば、資源価格の高騰もバブル、中国の躍進もバブル、トヨタの好業績もバブル、世の中バブルだらけになってしまう。根源的には不動産価格上昇を前提とした米国消費が持続可能ではなかったことが今の事態を招いているのであって、「円安バブル」などという言葉を使わずにもっと優れた分析をしている本はいくらでもある(例えば水野和夫氏など)。仮に今後長期的に円高が続くとして、ではどのような政策が必要なのか、それについての深い説明がないところも大いに不満が残る。
「これまでの経済政策は間違いだらけだ」と大上段に振りかぶったは良いが、中身は「構造」と「バブル」という手垢の付いたレトリックを弄しただけの本。有難がるのはやめましょう。