作家(小説家)の担当編集者だった人が、その思い出話を書くことはしばしばある。普通の人には知られない作家の裏面である。だから、ともすれば編集者の「俺はこれだけ有名な作家のことを知っているぞ」的な記述が鼻につく場合も多い。だが本書は、そんな思い出話とは全く違う輝きに満ちている。なにしろ著者は開高健というすでに文豪と呼ばれていた作家と、三百数十日間にわたって昼夜を共にする旅をした編集者なのだ。原稿をいただきに作家の家を訪問したり、たまに一緒に酒を飲んだり、という普通の作家・編集者の付き合いとは意味が違う。アマゾン河やカナダ、モンゴルなどの過酷な(しかし素敵な)旅を共にしたのだから、これは著者の「ほんとうの青春」「ただ一度きりの青春」である。一緒に旅した作家(文中では小説家)、高橋カメラマン、翻訳家で開高氏の友人でもある菊谷さんの3人は、すでに鬼籍に入った。遺された著者は、あの旅を追体験しようと、出版社を退職後、ひとりアマゾンへ向かう。著者は本書を、あの耀くような旅と、33年後の追憶の旅を織り交ぜながら、大きなアマゾンの流れのようにゆったりと記述する。これはある意味で、壮大な友情の物語でもある。著者は嫌がるだろうが、開高健・高橋'f・菊谷匡祐・醍醐麻沙夫、そして菊池治男というまだ若かった5人の、壮大な友情物語だと私には読めたのだ。こんな後味のすがすがしい文章を書ける著者が、私は心底羨ましい。