この本の主な部分は幕末から明治初期に新潟の開港で活躍したイギリス外交官の本国への報告書を翻訳したものです。江戸時代;開港前からすでに米どころ、その他、交通の要所として栄えていて開港場(かいこうじょう)に選ばれた新潟ですが、浅瀬と荒海という立地条件の悪さから、貿易はなかなか上手くいかずに10年ほどで終息へ向かいます。その間、本国イギリス議会宛に活動の実績と当地の様子が年次報告書などで報告されました。
もちろん、予算や今後の貿易の進め方という行動指針を決定するための資料、したがって、公式な根拠として活用されたのでしょう。自分の目で見て、目測かもしれない数値や見た人の評価・考察を交えながら説明されています。一貫した語り口調で丁寧に生の数値を多用し、例えば、地名にはどこそこからの距離のマイル(1.6km)や広さなどが、また、川や港には必ずフィートなどの深さの数値が添えられて、リアルに当時の様子が再現されています。(第9章―開港10年目の現状より)梅毒検査の規則に違反した医師は10円という(当時の教員の給与は12〜18円)罰金を科せられたのだそうです。その成果で・・・と。
データ収集法として人間の感覚器を用いて確立した尺度で測る{客観性を心がけた“主観”的方法}が採択されています。慣れない人・専門外の者に対して、回れ右をさせる統計手法や数年で改変されるスコアや略語などは出てきません。この本は経年劣化しない、読み易い {庶民の明治維新を示す立派な証拠}と言えるのではないでしょうか? 時と場合によっては、主観も大切だ、そして、エビデンスとは?ということを深く考えさせられました。
ちなみに、著者はいわゆる専門の研究者ではなく、私と類のA studentで、休日を利用してこの調査を仕上げたのだそうです(by 新潟日報記事)。これからも、頑張ってください。