現時点での、ケッチャムの中編集の邦訳は本書だけだと思います。ケッチャムといえば、現実の事件としても起こりそうな作品と、すでに一般の人間とはいえない生き物(異形態?)が登場する作品に分かれると思います。この中編集で扱われている作品は一応全て前者です(「ヒッチハイク」の後半と「川を渡って」の一部はやや後者の雰囲気もありますが)。
長ければいいというような風潮(しかも中盤からダレダレ)の作品が多い中、言葉を研ぎすました中編にこそ創作意欲が高まるというケッチャムですので、残りの「閉店時間」「雑草」も読み応えがあります。ただ、「雑草」は史実をヒントに書かれ、異形態は登場しない作品であるにもかかわらず、人間そのものが異形態になりうる恐ろしさを感じます。胸くそ悪くなる人もおられると思いますのでご注意を。