戦前から戦中にかけて日本でも検閲が行われていたが、それは国内法に基づくものであり、その法の存在は公にされていた。また、伏せ字の使用により、検閲されていたことを多くの国民が自覚することとなった。しかしGHQが行った検閲は、その事実を秘匿し、伏せ字や空欄の使用も認めなかったため、ほとんどの日本人は検閲済みの情報に接していたと言う自覚を持てなかったのである。しかも、この行為はポツダム宣言でも認められていないことなのである。そして検閲という言葉からは「占領政策に不利な情報の流布を防止する」に過ぎないと言うイメージを抱きがちであるが、GHQが行ったのは、さらに自分たちの都合の良い情報を流し、史実の書き換えまでも行う、謀略工作に近いものだったと言えるだろう。ドイツと日本の降伏は同等のものと思い込んでいる人たちがいまだに多いことなどを見ても、この検閲の影響は相当根深い。米国の公文書を丹念に検証することにより、この事実を洗い出した著者に深い敬意を表する。