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人の妻を奪い、その結果いっしょになった一対の夫婦、宗助と御米。それがゆえに世間から白眼視されることになったこの夫婦の苦悩の日々を描く。
もちろんこれを現代的感覚で読むことはできない。時代背景は封建的空気が未だ色濃く漂う明治である。姦通罪という不義を罰する法律があった時代であり、現代における“不倫の恋”などと同一視して軽い気分で読んだのでは主題の重さを感じることはできないかもしれない。
前作の『それから』では、主人公が友人の妻に恋心を告げ、それを友人本人にも打ち明け、結果それまでの生活をすべて破綻させたところで狂気を漂わせながら終わっている。
『門』ではそれを受けて、その後のひとまずの静寂を手にした夫婦の形に焦点を当てている。もちろん主人公も舞台設定も異なっていることは衆知のとおりである。
主人公宗助の苦悩を中心に描かれており、苦悩と向き合いつつも結局は答えや救いなどがない人生もあるということを示唆しながら終わる。
人の業深さを思わずにはいられない。
禅の門をくぐり、そこでわずかばかり滞留して再び門をくぐって帰ってきても、ついに自らの苦悩を解決できないまま、また再び静寂の生活に身を沈ませる。この様は身の始末をどうとも潔く処断できない人の弱さを十分に感じさせ、ある種の豪胆さを持った人は別として、いわゆる「その他大勢」の人々誰もが抱く心の脆さがどういうものかを考えさせる。
答えがない。
ない、ということにこの物語の本質がある。
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