「僧になりたい、と息子が言い出したときには、驚いた。」という書き出しに惹かれて購入。読み進めていくと、息子の修行記だけではなくて、残された両親の姿も同時に描かれていくことに気づく。和尚の厳しさの描写もいい。
そして、次第に僧らしくなっていく出家した息子。問題は両親の方だ。特に母親。この家には下の娘もいる。母親は夫に言うのだ。「あの子だけは私から取り上げないでね」。あの子とは下の娘のことだ。この一言を読んだとき、ぞっとした。息子が出家していなかったら、この母親はどんな息子べったりな女になっていたことか。そのあとも、妻は夫を責め続ける。「私はこう思っていたのに、あなたはなになにしてくれなかった」…。そのうち、全ては夫が悪い、になっていく論法。ああ…不愉快。同性だけに不愉快さは倍増する。
親離れする子供と、それを引き留めたい母親。そして多少の後ろめたさを抱える父親。そんな姿も描き出された「長男の出家」、とても良かった。