この写真を撮った高原さんは、ここにある写真を公表するつもりはなかったそうです。愛する教会が壊されていった写真を辛くて公にする気がしなかった。高原さんにそこまで思わせる魅力が、この教会堂とそこに集う人々にはあったのでしょう。文章を書いている筆者と編集者に説得され、写真展を開き、本書の出版にようやくこぎ着けたそうで、ほかに記録されていない被爆後の教会堂の日常風景や、解体の様子が記録されている、貴重な資料となっていると思います。
添えられた文章にも感心しました。被爆した旧浦上天主堂については、残すべきだったのに米政府の圧力により建て替えさせられた、といった批判、議論があります。そういう側面もあるものの、この教会を自分たちで建て、原爆によって破壊され、そこからまた再建させなければならなかった信者たちの素朴な気持ちもあり、単純な批判だけでは、当時の状況を正確には反映しきれない。本書の解説文では、そのあたりを、非常に抑制した文書で表現し、ほんとに残したかったのは信者たちの方で解体は身を裂かれる思いだったことなど、当時の状況をより明確に浮かび上がらせるものになっています。
信者ではないカメラマン、長崎の人間ではない筆者が、定式化されてしまった議論に与せず、歴史を超えて記録した本書だからこそ、これが成ったのか、と思っています。