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長崎乱楽坂 (新潮文庫)
 
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長崎乱楽坂 (新潮文庫) [文庫]

吉田 修一
5つ星のうち 3.9  レビューをすべて見る (16件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

風呂上りの火照った肌に鮮やかな刺青を躍らせた猛々しい男たちが、下穿き一つで集い、日々酒盛りに明け暮れる三村の家。人面獣心の荒くれどもの棲む大家族に育った幼い駿は、ある日、若い衆が女たちを連れ込んでは淫蕩にふける古びた離れの家の一隅に、幽霊がいるのに気づくのだった。湾の見える町に根を下ろす、昭和後期の地方侠家の栄光と没落のなかに、繊細な心の成長を追う力作長編。

内容(「MARC」データベースより)

若い男たちの肌の火照り、女たちの熱い息。性と暴力の渦の中から、少年たちが切り取った、自分なりの「男」。長崎の大家族を舞台に描く長編。『新潮』掲載に大幅な加筆を行い単行本化。 --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。

登録情報

  • 文庫: 222ページ
  • 出版社: 新潮社 (2006/12)
  • ISBN-10: 410128752X
  • ISBN-13: 978-4101287522
  • 発売日: 2006/12
  • 商品の寸法: 15 x 10.6 x 0.6 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 3.9  レビューをすべて見る (16件のカスタマーレビュー)
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5つ星のうち 4.0 少年の成長譚、そしていまは亡き家の物語, 2007/1/16
レビュー対象商品: 長崎乱楽坂 (新潮文庫) (文庫)
  吉田修一が長崎出身であるということ以外、その足跡はほとんど知らないのだが、この作品は自伝的ニュアンスの濃い作品である。もしそうでないとしたら“自伝風”を仮想した小説だ。六章から成り立つが五章までが兄の駿の視点から、最終章だけが弟の悠太の視点から書かれている。実際の作者が兄・駿なのか弟・悠太なのかは知る由もない。

  父は事故死し、幼い兄弟は母の実家で暮らしている。母の兄、つまり伯父はヤクザであり、家には年老いた爺さん婆さんや伯母のほか、伯父が拾ってきた女や若い衆たちが一緒に暮らしている。兄弟の幼少時、ヤクザ稼業は羽振りがよく毎日が酒盛りである。プライバシーなどまるでない家の中で“離れ”だけが唯一の聖域だ。ここは母と若頭の秘め事の場であり、自殺した母の弟、つまり叔父の幽霊と、駿の交感の場でもある。

  やがてヤクザ稼業は傾き、人は離散し、家は解体するが“離れ”の空間だけは最後まで残っている。高校を退学し都会に出るつもりだった兄の駿は最後の最後でなぜか踏みとどまり、叔父の幽霊が住む“離れ”と共に家に呪縛されるのである。

  この小説は“家”という動的な場と、そこに内包される静的な“離れ”という空間を基軸とする物語である。最近では他人が家に居るということがめったにないし、年代の違う者同士の交流の機会もないが、この小説の主人公である少年・駿は、年上の他人や従姉妹に、大人としての役目を割り振られながら少年から大人に成長していく。性的な体験にも年上の他人や従姉妹が介在している。

 父親の居ない欠落感や、前近代的な家の物語の中での疎外感は、吉田修一の小説の、一筋縄ではいかない感じ、ざわざわとしたノイズ感、小骨が引っかかったような読後感に、どこかで影響していると思う。

 また、この人の描写や表現が類型的でなく、かなり独特なものであることを今回読んで見てあらためて感じた。
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5 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 「三村の家」に流れるもの, 2004/8/3
レビュー対象商品: 長崎乱楽坂 (単行本)
吉田修一氏の変貌といって言いすぎであれば、進化がおもしろいです。一作ごとに、手元でいろんな花を自在に咲かせるような、その差異に興味をひかれます。吉田氏の描く人間は、どちらかといえば、汚い部分も欠如した部分もさらけ出されており、しかし、生々しいなりのフレッシュな感じがあって、いつも引き込まれて読んでしまうのだと思います。

これまでにない骨太な猛々しい感じのする『長崎乱楽坂』は、酒、男と女の痴情めいたエロス、義理とスジの渦巻く乱れた暮らしなどが強烈な印象で、ドラマティックな男たちの物語が力強い筆致で繰り広げられていきます。
幼い駿と悠太の成長は、この「三村の家」の盛衰と重なるように配されていて、ラストシーンは圧巻です。

荒くれた男たちの体温さえ感じられるような「三村の家」で、そこだけまるで、青白い光を放っているかのような「離れ」には、別の世界が存在しています。駿が幼い時から感じつづけてきた“異界”の人・・・。私はこの「離れ」の存在が『長崎乱楽坂』の、もうひとつの、現実と裏表の世界として、駿の人生を決定付けたものと思えてなりません。

愛や友情や安らぎは、ここにはありません。あるひとつの、野太い乱雑な家の一時代を通り過ぎていった幾人もの男たちと、彼らの下で育った駿と悠太の人生を示唆して、物語は終わるのです。自分では拭えない自分の中に流れる血を、駿は感じまいとして「離れ」の世界に篭り、悠太は外へ出ることで、それを払拭しようとしているように思われます。

ラストシーンの鳥肌が立つような、終焉の描写が、駿の呪縛を解き放つものであれば、少しは救われるのに・・・と、願いながら読み終わったのでした。

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6 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 濁った水に棲む魚, 2004/10/27
レビュー対象商品: 長崎乱楽坂 (単行本)
舞台は長崎。性と暴力に渦巻く家に生まれついた2人の兄弟。彼らの住む家には、背中に美しい彫り物を施した男たち。ケンカと酒と女で、飽和状態になってしまった、この濁った水槽のような家で育つ二人は、その中でのみ、男を知り、女を知り、人生を知るしかない。

やくざの子といわれながら育つ二人だが、その血が濃く流れているわけではない、むしろ親族の中でタダ1人若くして自死したという噂の画家志望だった叔父の幽霊とともに、男たちをあるときは憎み、あるときは羨みながら、成長する。宿命に抗いながらも叔父の亡霊の住み着いた「離れ」から結局逃げだせない兄。その兄の庇護のもとに、結局は軽快に家を捨てていく弟。

成功や、未来や、夢などという、ボーナスポイントに全く縁のない兄の人生は、どうやっても水槽から浮き上がることはない。

でも、このおにいちゃん、私好きだな。そして、ちゃっかりした弟くんもかわいい奴です。作者の吉田修一は兄の駿でもあり、弟の悠太でもあるのだろう。

これっていつの話かなー、と思いながら読みましたが、文中のお店の名前とかから想像するにやはり私と10歳違いの作者と同じ時代を書いてますね。文だけ読んでいると、もうすこし前のような印象があります。(というのも私自身が長崎出身なので、吉田氏のほかのどの作品より、このお話への思い入れが最初っから強かったわけです。)長崎弁もなんのけれんもなく書かれていて、好感がもてます。

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