ある種の「エゴイズム」というのは、作者にとって骨がらみのテーマなのかも知れない。この作者の描く「狂気」は、いつも肉感的な熱気を帯びている――他の作家なら、抽象的な非人性として立ち上げるところを。本作は「エゴイズム」が合わせ鏡の狭間で宙吊りにされるような感触を持つ。「私」の欲望が「私」に奪われていく不条理……そして増殖する「私」。肉体の断片化とそのシンメトリー的な増殖・接合から異形の群れが現前する。うーん大乱歩もうなされそうなイメージの連続っすね。芸術(家)をフィーチャーしたミステリならデカダンス、と相場は決まっているけれど、作者はパンクス要素が実は強かったりするんじゃないか。ふと、この人に楳図 かずお の漫画のノベライゼーションをさせたらハマるんじゃないか、と思った。