恐怖や深刻さを伴はない魔物が随所に登場し、退屈な日常にコミカルな潤ひと笑ひをもたらしてくれる鎌倉ものがたりワールド。御伽話のやうな題材が一色家の周りを明るく楽しくする事件が次々と生起するのです。登場して来るキャラクターも柔和な親しみのあるものばかりです。そして、現在の日本をかたどるやうな「落ち」には思はず笑ひが出てしまひます。魔界に娯楽アトラクション施設ができても、そのヒットに「不当表示」クレームが来たり、修道院が倒産して魔女修道院になってしまひ、その変化に泡を吹いてしまふ鎌倉ルパンがゐたりと俗世間そのまま移って来たりしてしまひます。戸籍上の百歳続出事件の記事も当たり前に百歳以上がゐる魔界ワールドを知らせる挿話になったり、非行少女も魔物の血を引く人情挿話になったりしてしまひます。かういったエンターテイメント的な物語展開は、無味乾燥の日常を面白くしてくれる素晴しい仮想空間であり、この二十八巻にも健在なのであります。