親友のファンショーがいなくなったことを知らされた「僕」は、彼の残した小説を出版するが、「僕」の生活は一変してしまう。「僕」がファンショーの名で小説を書いていたという噂が流れ始めてから「僕」の中の何かがおかしくなる。「僕」は親友を愛していたのと同じくらい憎んでもいたのだ。彼は本当に現実世界にいたのだろうか、もしかしてファンショーは「僕」ではないのだろうかと現実と幻想の境界線が曖昧になってくる不思議な作品。「われわれは自分自身のために存在しているのだろうし、ときには自分が誰なのか、一瞬垣間見えることさえある。だが結局のところ何ひとつ確信できはしない。人生が進んでゆくにつれて、われわれは自分自身にとってますます不透明になっていく。」この「僕」の言葉の中にファンショー(=オースター)の心の叫びが聞こえてくるような気がした。