日本の高度成長の時代に誕生した破天荒な男、作田又三の生き様を描いた物語。
上巻は作田又三の誕生から関西での学生時代の生き方が中心に描かれており、下巻は関西を飛び出して社会に出て働き始めてからの生き方が中心に描かれているのだが、無鉄砲で何をしでかすか分からない又三の生き様は大いに楽しめた。特に下巻では次から次へと新しいことが起こり、笑いが抑えられない場面が多かった。
又三の人生にはいくつになっても決められたコースがなく、多くが恋愛に左右されながら夢を追いかける状態で、失恋をきっかけに大きく人生が変わることも珍しくない。まさに人生という航海の荒波にのまれて大きく舵を切りながらもなんとか生きていく、その生き様そのものがおもしろかった。
本書の下巻で又三の友人が言った言葉も印象に残った。
「昔は生きることが人生の最大目標だった。働くことが生きることで、それ自体が喜びであり、誇りであり、家族への愛の行為になっていた。ところが現代の繁栄は生きることからの闘争から解放され生き方や職業を選択できるようになった結果、多くの人が混乱し、生活も仕事も愛も何一つ確信を持って掴むことができないでいる。また、生きることが何より大事であった時代は、逆にそれだからこそ家族と愛する人が人生の何よりの拠りどころであり支えになっていた。ところが今や、家族の結びつきが最も弱くなった時代がやってきて、現代ではもはや夫婦は単なる男女の結びつきにすぎなくなった」
だからどうすればいいのか、という答えはそれぞれの人生で何を大事にするのか考えてもがきながら見つけていくしかないと思う。