表題作はシリーズ3作目、ということで瑛至と三島、二人の関係が決定的なものになっていきます。
盃を交わし、すでにお互いに特別な存在であると確信しながらも…
『自分の持っているものは全てくれてやる』と言う瑛至の言葉に、嬉しいはずなのに、虚しいような、寂しいような違和感を覚え『何か違う…』と返す三島。
彼の感覚的に見抜いてしまう鋭い指摘に、瑛至は自分自身の《欠如する部分》に向き合うことを意識し、同時に、物語も向き合わざるを得ない方向で進んでいきます。
1、2作目で見せてきた、瑛至が漂わせる空虚さ。
右肩の傷と共に刻みつけられた、重々しい過去が紐解かれ、心の奥底に押しやってきた《ある感情》が、ある事件によって呼び覚まされていきます。
きっかけは、やはり三島なのですが、無条件で瑛至を信じ、守ろうとする、この男の気持ちの迷いのなさが、瑛至を奮い立たせる不可欠な要素となっています。
心理面と、血生臭いダークな部分にも切り込んでもいますが、三島の根っからの明るさが重い流れを掬い上げてくれているようです。
更に、赤池はじめ、組長だったり人情味あるサブキャラが脇を固めているので、ドロドロ感はあまり感じません。
三島が傷を負い、院内で二人が身体を重ねるシーンはこれまでに無く扇情的です。
そこに至るまでの一件によって、ある種の興奮状態が瑛至に拍車をかけているため、危うく、乱れた表情が妖しく美しい…!
煽り、煽られながらの二人の絡みが、互いの存在と想いを確認し合うよう…。
ぜひ、このシリーズ1作目《最果ての地》から読んで、瑛至の心の変化に萌えていただきたいです。
同時収録は《院内恋愛のススメ》と《花の檻》
《院内〜》は、ゲイのツンデレ受がクールさを装いながら、実はもろいところがあって、時折見せる素の表情に萌えです。
ノンケ攻の、長身ロン毛、機能的な(今時の?)白衣もカッコイイですよー!(b^ー°)
《花の檻》は、背景や効果的なところで少し地味な感じがしましたが、ストーリーは良かったです。
数年に渡り、告白できずに相手の想いを探り合っていた二人。ストイックではありますが、よそ見もせずに寄り添ってきたこの二人の一途さは筋金入りかと。
砂河さんの後書きは、毎回楽しみにしていて今回は1Pだけですが笑わせていただきました。
描きおろし《三島のささやかなる野望》も、瑛至の〇〇姿(三島妄想)が見れてナイスです。
《最果ての地》から比べると、砂河さんのタッチもより洗練されてきて、何しろ線がキレイです。
シリーズとは別の《寡黙な珈琲 臆病な胡桃》など、繊細なストーリーも描ける本当に器用な作家さんです。
今回も、3編違ったジャンルを堪能できますので、ヤクザ好きな方はもちろんそうでもない方も、十分に楽しめると思いますヨ!