著者の、修羅の執念が立ち昇るような小説にはいつも唖然とさせられる。初読だった「塩壷の匙」の荒みと凄みには心臓のど真ん中を打ち抜かれたようになり、「赤目四十八滝心中未遂」の鮮烈と哀切には僕の中の--おかしな言い方だけど--男が、疼いた。その著者の最新エッセイ集(この言い方は著者には軽すぎるが)。とにかく、ごつい。自らのエゴや嫌らしさをこれでもかとさらすとともに、他者の因業をもこれでもかと描く。一つ一つの文章に込められた情念というかエネルギーというか・・・。圧倒されるばかりだ。これだけ、マジ、だと相当に神経をすり減らす事だろう。著者の奥様高橋順子氏の「けったいな連れ合い」にも書かれていたが、実際、「赤目・・」で直木賞受賞前後には強迫神経症を病まれたとのことだ。自ら「反時代的毒虫」を自称される著者の因業全開の本書。渡世術ばかりにまみれた自分の生活から足抜けしたくなる魅惑と力を久々に感じた。~余談だが著者ご自身で記載されている千駄木駒込町のお住まいは僕の自宅と近い。偉大なる「毒虫」との偶然の遭遇を恐れつつも期待する気持ちが抑えられない・・・。