この作品によって、マンガは一流の文学と肩を並べるようになったと言っていいのではないだろうか。
文学と言える作品と言えば、その前に手塚治虫がいたじゃないかと言われそうだけれど、人間の怨念と言えるほどのものをマンガに書き込んだという点で、この作品は、マンガというものの一つの到達点を示したと言っていいのではないだろうか。これほどまでの作品を、僕は今もって知らない。
当時、僕は小学生。親はギャンブルに明け暮れ、二三千円の学校の集金すら払えなかった。 そんな僕が読んだ、「5円のお金が無いうちもあるのです。」という作中の母の言葉と姿は、35年ほど経った今も鮮明に記憶に焼きついている。読みながら、僕は、「僕の理解者がここにいる。」と思ったものだった。そして、主人公の破滅する姿に、自分を重ねて悲しんでいた。
そんな力を持つマンガが、今、どこにあろう。優れた作品が沢山あることは認めるが、これほどの迫力を持ち、美しくないドラマを、決して衒(てら)うわけでもなく、あざとさを狙うわけでもなく、敢然と描いてみせる作品が。
幸せな家庭を築いた今も、我が家のクローゼットにはこのマンガがある。
ホンモノの悲しみが、このマンガにはある。