ヒロインにしては影の薄かったアンブローシアですが、このお話は最初から最後までアンブローシアが中核になって物語が進んでゆく印象です。
彼女の見つけたささやかな幸せ、そうしてそれを失ってでも成し遂げたかった事。
最初ははねっかえりで繊細で『強がり』な印象でしたが、ここにきて『本当の強さ』というものを知った彼女。
『王女とテロリスト』が心の中でせめぎ合っていった以前の彼女に比べて、『ガリアンルシードの王女』でもあり『アンブローシア』である事を素直に認められた今の彼女は、本当に魅力的です。
個人的にはオリヴァントがセドリックに昔話をするシーンが印象的です。
彼の胸の奥底に秘めた愛情と優しさが伝わって来ます。
そうして、メルメットの王女とセドリックの邂逅のシーン。
彼女の「私はきみ達が思うような悲劇の王女ではないし……」という発言がとても印象深かったです。
彼女の状況は酷く理不尽なもので、それをもってして『悲劇』ではないと言い切る彼女には、一体何があったのか。彼女が「ザール」と呼ぶ冥王ザルカリ、そうして「白の王子」というのは(名前は忘れましたが。たしかエスカリオウとかそんな?)恐らくザルカリに殺されたという光の精霊王のことなのかな?と予想していますが。
彼らの真実を知りたいな、と素直に思わせてくれました。
個人的には、全巻通じてスラファト側の人たちの微妙な感情の表現がとても好きなのですが……。
特にジュディットの感傷は秀逸だと思います。
『永遠に失った、私の美しい理想を悼んで。』
なんて美しい言葉だろう。
うっとりします。