本書は、ニューギニア人の友人からの問いかけを受けて、「地域による人類の発展の格差がなぜ起きたのか」という根本的な疑問に答えることがテーマとなっている。1万3千年前からたどって、人間の環境適合の進化過程にその理由があることを膨大な情報を下に解き明かしていく。
最も根本的な発展の格差もたらした大きなパラダイム・シフトを農耕の始まりにおいている。ユーラシア大陸におけるその開始の早さがヨーロッパ人に「銃、病原菌、鉄」という世界征服の手段をもたらした。なぜ、ユーラシア大陸では農耕の開始やその後の伝播が早かったのか、それは気候、地勢や東西方向の大陸の広がりが起因しているといった論旨が展開されていく。
その視点は面白く、ある種ミステリー小説を読んでいるかのように読み進めていくことができるが、下巻は上巻の論点を繰り返す内容になっており、少々退屈する。
あくまで、著者はアメリカの学者であり、取り上げている素材が欧米の視点に偏っているいることを我々日本人含めアジアの方は感じるだろう。また、少々うがった見方をすれば、欧米人の残虐な世界侵略を、「進化論」を用いて無意識のうちに正当化しているようにも読み取れる。
この著作のエピローグの一節のタイトルにもなっている「なぜ中国ではなく、ヨーロッパが主導権を握ったのか」という、おそらく多くのアジア人が持つ疑問にはこの書は十分に答えてはいない。「儒教哲学が浸透している中国・アジアと改宗を強制する宗教を推進力とするヨーロッパ」という対比にそのヒントはありそうだが、なぜ、そのような文化や社会価値観の違いが発生したのか、欧米人の他者に対する差別意識の強さや残虐さがどこから根本的にきているのかはこの書のテーマからははずれる。
とはいえ、新聞のゼロ年代の50冊のTOPに選ばれただけの事はあり、新しい人類史の見方を教えてくれる良書。