少年少女向けということで、白乙一でも黒乙一でも、学生モノ乙一でもない、
いつもとは違った感触の作品。
少年少女向けミステリらしい展開で、
キャラクターの口調や行動は正に乙一氏のキャラクターなんですが、
乙一作品の特徴である、淡々と醒めたところが無いというか。
ところどころ、「児童書でこんなんやって良いんだろうか」とハラハラしたり、
視点の転換については乙一氏らしい妙味もあったりして、
少年少女向けミステリとしては充分楽しめると思うのですが、
乙一作品として考えると、想像していたものよりは若干評価が落ちてしまいます。
個人的に、ポプラ社の探偵シリーズ(特に明智小五郎シリーズ)で育ったこともあり、
他社の少年少女向けミステリのように激しさがあまりない内容だと
物足りなさを感じてしまうということも原因だとは思うのですが、
新本格以降の作品群に慣れてしまって、視点の転換が書かれた時点で
直ぐその後の展開を予想してしまう癖ができてしまっていたのも充分楽しめなかった原因かと思います。
素直に読めなくなった自分の成長を、恨めしく思いました。
印象的だったのは、冒頭の「音」。
また、固有名詞がチョコレートの名前で、読んでいて楽しかったですし、
子供の頃に読んでいたら、きっとチョコレートを食べるたびに思い出せたろうになと思いました。
今作は試運転のような印象もあり、
ロイズやリンツ、ドゥバイヨル、メリーさんといったキャラクターの登場が、
この作品だけというのも残念な気がします。
できれば、このメンバーでの続編が読んでみたいです。
『イノセンス』等の美術監督である平田秀一さんの絵だけあって、
装丁が大変美しく、少々ショックな描かれようだった人物はともかくとして、建物や地図の絵も美麗。
手元に置いておくのが嬉しくなる1冊です。
是非一度手に取って見て頂きたいですし、
購入された場合は、ブックカバーの用意もお薦めしておきます。