まず読み物としてはそこそこ退屈せずに読めた。
この手の銀行実録ものは銀行をドロップアウトした人が書くことが多いこともあって、どうしても銀行への恨みと非銀行員である読者への媚びから、変に誇張したり銀行の世間から見て滑稽な点を強調したりすることが多いが、この本は割合そういう傾向が少なく、比較的公平な視点から書かれている点は好印象を持った。
内容的にも銀行員を何年かしたものから見れば、一度は経験したり見聞きしたりしているようなことが殆どでそれほどの目新しさはないものの、銀行外の人が読むならそこそこ面白いと感じるのではないかと思われる。
ただ、問題なのは中に書かれている筆者の行動である。大蔵省検査の隠蔽工作については、筆者の出身銀行において既に有名になったので「いまさら」ということも出来るが、融資実行への行内工作を依頼されて顧客から私的に現金を受け取ったり(明らかに服務規程違反)、債務者の親族を騙して所有者に無断で担保を差し入れさせたり(完全に犯罪。だいたい署名はどうしたんだ?)、はっきり言ってやっていることが無茶苦茶である。
こんなことを実名や出身銀行をさらして本に書く神経が正直理解できない(特に懺悔している風でもない)。
とりあえず、この筆者の倫理水準は銀行員全体の最底辺にあるのは間違いないところなので、銀行員経験のない一般の読者の方には、これを一般的な銀行員像と錯覚しないようご注意いただきない。