フィギュアスケートの世界を描いた作品。フィギュア独特の師弟関係や育成システムなどが詳しく取材され、それはそれとして面白い。フィクションとはいえ、この作品でフィギュア競技の繊細さ、親の存在の重さなどに触れた後は、2011年の日本選手権を制した浅田選手がどんなに凄いか、改めて感じる。
しかしこの作品の真価は、母が娘の成長にどれだけ自分を賭け、覚悟と執念をもって臨めるかという「母」のドラマである。母が、才能のある娘の成長に自分自身を投影し、もがき苦しむ。それはフィギュアでなくとも、普通の家庭でも子をもつ親ならば、誰でもが感じる想念なのではないだろうか。だからこそ、この主人公の母親を、冷めた目で見ることができない。
雫井氏が放った書き下ろしの一作。フィギュア人気の中、この秀逸なドラマになぜレビューがあまりつかないのか、本当に不思議だ。