当初、賢治の遺族であった 実弟清六さんは この作品の制作に対し「主役が猫では困る」と反対していたそうだ。
しかし、完成試写を観た氏は「賢治も喜ぶと思います」と一転して感動を伝えたと言われている。
上映当時、高校をサボって観に行った。映画館は私一人きりで貸切状態だった事も手伝って 独特な孤独感と包容感を抱いたまま帰宅したのを今でも強烈に憶えている。
幼い頃、枕元で父が朗読してくれたこの作品。
“ジョバンニ” とか “カンパネルラ” “ザネリ”
と言った登場人物の名前が異国風味でそれだけでワクワクし、
汽車が銀河を走るという奇想天外な設定に、子供心に想像が膨らみ
天を見上げては、汽車を探した日々を懐かしく想う。
この映画は、賢治の描きたかった(伝えたかった)心象スケッチを見事に成功させている。一場面ひとつずつを丁寧に丁寧に描き、手を抜いていない。さぞ難しい作業だったと思う。
ワンカット・ワンカットの角度、構成、登場人物の眼の光具合。
台詞も引きもせず 足しもせず、原作に忠実だ。
声優陣のトーンも素晴らしい。文句なしの出来映えだ。
また、大好きな脚本家〔別役実〕も参加してることに感動。
このアニメ盤のみの“無線技師”も生きている。
終章に「春と修羅より“序”」の朗読はエンディングテーマの音楽と一緒に共鳴しながら淡々と読まれ最高のスパイスになった。
その点を見ても、子供の為だけの作品ではないことがよく解る。
おそらく、この作品を超える同名作品は生まれないのでは?
最後に。〔細野晴臣〕の音楽が不思議ワールドを盛り上げている。