「ますむらひろし 宮沢賢治を描く」シリーズの第1段。対象は賢治の代表作「銀河鉄道の夜」。しかも、最終確定版と初稿版の2本立て。賢治の愛妹の死が大きく影響していると言われる本作において、賢治の死生観がどのような変遷を辿ったかを眺める事の出来る贅沢な創り。ヴィジュアル化不可能と言われていた本作を、ますむらはアタゴオルの住人(猫)の力を借りて、見事に幻想的に映像化している。
旅路の前から、幼いジョバンニの生きて行く苦労が描かれる。そして、ジョバンニの入眠とカムパネラの旅立ち。旅路の中で出会う人々の言動、列車を取り巻く光と闇の世界。賢治の人生観、宇宙観を示していると言われるこれらの諸事象を、ますむらは独特の筆致で見事に再現しており感心する。元の文章における精緻さも、微妙なタッチで巧みに表現している。そして、思想的深遠さをスケールの大きな絵で読者に提供する。
賢治の持つファンタジーとますむらのファンタジーとが共鳴し合って、賢治の思想が無理無く読む者の胸に染み込んで来る。賢治の作品をヴィジュアル化するに当たってはベスト・マッチだと思う。深遠な思想を幻想的世界の中で描いた傑作ファンタジー。