「腐敗した民主主義」と「名君による専制政治」、果たしてどちらが人類にとってより良い政治と言えるのか。
その命題を、不敗の策士ヤン・ウェンリーと、常勝の武人ラインハルトとの対比によって、壮大に描いた大作の完結編。
全10巻に渡るこの物語の真髄は、いわゆる兵器の擬人化や、超常的な力を持つ人間を一切登場させていないこと、そして、主人公たるヤンやラインハルトに至っても、歴史の一部として淡々と描いているところにあると思います。
分かりやすすぎる対立構造を用意しながらも、単純な勧善懲悪の物語としては書かれていない。かといって、勝ったほうが正義、という終わり方もしていない。
答えは作中で生き残った者達――つまりは読み手である私達に委ねられているのです。
ですから、分かりやすく、明快な決着を望む人には向かない作品ではあると思います。
とはいえ、絶対善と絶対悪の戦いなど存在しないことは、私達の生きる世界でも同じです。
日本にいるとなかなか戦争を身近に感じることなどできませんが、いつかその命題の答えを求められるときが来るかもしれません。
あまりの長さ、登場人物の多さに今まで敬遠していた人も、秋の夜長にチャレンジしてみて損はないのではないでしょうか。