濃密な語感に満ちたねっとりとした文体(読みにくいけれど、それが豊穣さを醸し出す)で近未来の退廃した世界が描かれた作品集。近作「砲艦銀鼠号」(集英社)のあまりの淡白さにシーナも寄る年波には勝てぬのかと切なくなったが、冒頭10行ぐらいを読んだらSF3部作のあの「シーナワールド」がどわんとカムバックしており感涙。一篇一篇がとても短く、もっと長々とずぶずぶ読み耽っていたいと思うのは贅沢な気持ちなのだろうか。「武装島田倉庫」(新潮社)でキラリとした印象を残す灰汁が登場する「水上歩行機」は作者から読者へのプレゼントだと思って味わい深く読んだ。近日文庫化される「走る男」(朝日新聞社)以降新作長篇SF小説にとんとお目にかかっていないが、本書を読むと久しぶりに「アド・バード」(集英社)のような骨太作品をむしょうに読みたくなってしようがない。