作者の3作目とのことだが、とするとこの作品から宇江佐ワールドがトップギアに入ったということか。
5編からなる連作であり、初章の「その角を曲がって」の時点で、これ1本で映画にできそうな秀作と思ったが、読み進んで行くとどれもが映画化・ドラマ化できそうな作品群である。
主人公の同心は、その姿を見ただけで子供も震える“容貌魁偉”の男。
宇江佐小説にはよく出てくる主人公のパターンであり、さしずめその先駆けといえるのだろう。
一人娘の小夜もお世辞にも美形とはいえない容姿で、作中ではそんなことを気にする様子もない無邪気な少女なのだが、
実は内心ではコンプレックスを持っていたことがクライマックスに来て表れる。
当初13歳であった小夜は章が進むにつれて1つずつ年をとり、最終章では17歳を迎え、
捕り物小説の形をとってはいるが、ヒロイン・小夜の成長を描く小説でもある。
内面は成長しているが外面は逆に幼くなっているように感じるところも一興。
余談だが、最終章には事件絡みで雖井蛙流平法の遣い手・麻吉が登場する。
その師匠は宮本武蔵を尊敬しているというが、宇江佐さんの後の作品である「深尾くれない」の主人公・深尾角馬のことだろうか。