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56 人中、54人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
虚弱少年の、薄玻璃の心,
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レビュー対象商品: 銀の匙 (岩波文庫) (文庫)
ほんとうに記憶だけで書いたのだろうか。大人の書いた子ども、ではなく、子どもそのもの── 本書はまるで、小さい頃に綴っていた日記を久しぶりに 開いたような懐かしく繊細で清浄な光に満ちている。 繊細であればあるだけ人一倍被り感じるものの哀れに 始終涙を浮かべる少年は周囲の野卑な者の目には 確かに煩わしく見えることだろう。 そしてそれが為にますます人嫌いや憂鬱症に拍車をかけ、 うちなるもの・儚いもの・美しいものに心惹かれ 耳を傾けていく彼の心のうちが薄玻璃の花のように 痛々しく愛おしく感ぜられる。 文章も美しく、自然で衒いがない。 仲良しの女の子が遊びにくる時の足音「ぽくぽくちりちり」や、 鳥が飛び立つ時の羽音「たおたお」など、 擬音語や擬態語も澄んでいる。 いつか全文を手書きで書き写してみたいと思う。
27 人中、26人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
幼い頃の記憶に生きることの喜び,
By Yaginuma (神奈川県相模原市) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 銀の匙 (ワイド版岩波文庫) (単行本)
この作品はどのように分類されるべきなのでしょうか。自伝? 随筆? 或いは小説? どの表現も適切でないように思われますし、そもそもこの作品を分類しようと試みること自体が無駄な行為かもしれません。明治44年(1911年)から大正2年(1912年)、中勘助が27歳から28歳にかけての時期に執筆された作品で、作家の幼年時代の追想を綴ったものです。愛する伯母との愛情溢れる日々、優秀な兄との相克、小さく細々しながらも記憶に刻まれている物たち。しかし、この作品が単なる追想で終わっていないのは、作家が執筆時には既に20歳代後半にあったにも拘らず、記憶の中の幼年時代を生きていたという事実です。そのことを現実からの逃避と呼ぶ人があるかもしれません。しかし、この後家族や自らに起こる悲劇に否応無く巻き込まれて行くことを考えると、彼がこのような作品を物したことを非難すべきではないでしょう。 大人の言葉を用いながら子供の世界をあったがままに鮮やかに蘇らせたところが、この作品の稀有で賛嘆すべきところではないでしょうか。 現在古書以外で手に入る中勘助の作品は、『銀の匙』と『提婆達多(でーばだった)』の二作しかありません。彼は多くの随筆や詩をも残しているのですが、残念ながらそれらを入手することは容易ではありません。残念なことです。
42 人中、39人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
懐かしさが込み上げた,
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レビュー対象商品: 銀の匙 (岩波文庫) (文庫)
中勘助は何と言ってもその文体が非常に好きです。独特の効果的な比喩表現を用いた、さらっと流れゆくような涼やかな文章に、私はある種の癒しを感じます。 作者の過去を作者とともに振り返っているうちに、自分の幼かった頃が思い出されて、不思議な哀愁と懐かしさが込み上げてきて涙が出ました。 美しい情景と、そのなかに生きる人々。 淡々と過ぎてゆく静かなる日々。
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