タイトルから勝手に握り寿司を想像してしまったが、押し寿司だったので、いきなり肩透かしを食らったような気になった。ところが読み出すと、ページをめくる手が止められないほど面白い。ミステリーでもサスペンスでも活劇でもないのに、先へ先へと読まされてしまった。著者の作品にありがちな、人生観、生き方、筋目、気働き、仕事上の工夫などが次から次へと出てくるが、鼻に付かない、説教臭くない。ほど良く配置されている。巧みなストーリーテーリングである。
押し寿司の奥深さや人物描写がきっちり描かれていて、主人公やその周辺の人物に共感を覚える。結末もハッピーエンドで爽やかな読後感に包まれる。
時代小説が嫌いでない限り、読んで損はない。