連絡船の本には、特に青函連絡船に多いが惜別とかノスタルジーといった形容詞が似合う写真集系の本や、船舶ファン向けに船の1ジャンルとして取り上げる本、また洞爺丸など特定の事故にターゲットを絞った本もある。これらの本はたいてい題名がただの「連絡船」であり、鉄道の駅間を連絡するとか駅に直接接岸して鉄道車両を積込むといった「鉄道連絡船」としての機能は二の次となっている場合が多い。その点、本書は題名の頭から「『鉄道』連絡船」とうたっているように、鉄道(ファン)側から見たまさに日本の鉄道連絡船の総合解説本となっている。
すなわち青函・宇高・関釜・稚泊を4大鉄道連絡船とし、各航路の歴史と歴代の船と保存船、(鉄道ファンのため(?)の)船の用語の基礎知識、桟橋のあった駅、鉄道連絡船に接続した名列車ものがたり、などから成る。名列車ものがたりはイカロス出版が本書の少し前にシリーズで出していた名列車列伝と連動するような内容であり、本書自体が名列車列伝シリーズの番外編とも言える。
上記4大航路に比べてその他の航路の扱いは小さく、早期に海底トンネルが開通した関門・関森航路、鉄道車両航送の無かった仁堀・大島・宮島の各小航路は全部合わせても9ページとなる。
少々難を言うとすれば、鉄道ファンとしては最も興味のあると思われる鉄道車両の積込み、そのための可動桟橋の仕組みなどをもっと図入りなどで解説して欲しかった点。これが星1つ減の所。
ともあれ、鉄道ファン目線で見た連絡船に関する良い資料。興味ある(鉄道)ファンは手に入るうちにゲットしておいた方が良いだろう。