カナダ生まれの歴史編集者兼新鋭ファンタジー作家エヴァンズが2008年に発表した注目のデビュー作で異世界ファンタジー「鉄(くろがね)のエルフ」三部作の第1部前編です。本書の舞台は人間の女帝が統治するカラル帝国で、エルフ、人間に近いエルフキナと呼ばれる種族、ドワーフの四種族が共存して暮らしています。ヒーローでエルフのコノワは故郷ヒンタの地で子供時代に狼樫(オオカミガン)という木と絆を結ぶ事で魔法を使えるようになる種族の習性を、エルフの魔女〈影の女王〉の印というけがれを帯びて生まれた為に果たせず、故郷を離れカラル帝国軍に入隊し同じ境遇の者達が結集した精鋭部隊〈鉄のエルフ隊〉で隊長として活躍します。しかしコノワが密かに〈影の女王〉の手先と化していた総督を殺した為に部隊は解散させられ自身は森へと追放されてしまいます。一年後森でベンガーという動物のジアと共に暮らしていたコノワは不意に絶滅したはずの獣人・怪猩(ラッケ)に襲い掛かられ、やがて州長官の娘でエルフキナ人魔法使いのヴィジーナと出会い帝国軍への復帰を命じられます。本書の読み所は主人公エルフのコノワとエルフキナの娘ヴィジーナとの種族を超えた愛、新生「鉄のエルフ隊」の新米歩兵で眼鏡を掛けたアルウィンとドワーフで百戦錬磨の軍人イムトの親子の様なコンビの活躍や、不思議な魅力の帝国の女性新聞記者ラリー、軍の味方の黒牙象(ムラファント)・犀鹿(ブリンド)・奇鳥(スリークス)といった動物達に対し〈影の女王〉の手下のラッケや犬蜘蛛(フェローグ)という怪物と真に盛り沢山です。ファンタジーというジャンルは異世界のしきたりに馴染むまでは時間が掛かりますが、一旦雰囲気を掴んで物語の渦中に身を置くと先の事など気にせず唯今の瞬間を味わうだけで幸せな気分にしてくれます。新生「鉄のエルフ隊」を率いるコノワ隊長の胸のすく活躍が読めそうな次巻に期待しましょう。