カナダ出身の新進ファンタジー作家エヴァンズが2008年に発表し絶賛された異世界ミリタリー・ファンタジー「鉄(くろがね)のエルフ」シリーズ第1部後編です。女帝の命を受けカラル帝国軍への復帰を許され新生〈鉄のエルフ隊〉の副隊長となったコノワは、エルフの魔法使いの父ジュルワンから不思議なドングリを授けられますが、その事が元で愛を感じたエルフキナ人の魔法使いの娘ヴィジーナと仲違いしてしまいます。しかもコノワは無能な皇太子の隊長につき従い得体の知れぬ〈星〉を探して危険な東の地へと向かう不本意な任務を止む無く承諾し前途多難な行軍を開始します。後半の本書では、ドワーフの古参兵イムト伍長の分隊が新米兵アルウィンらを率いる過酷な行軍の模様や〈永遠の見張り〉と呼ばれる親切なエルフ達との邂逅、戦死者が影となって甦る不思議な現象が描かれます。そして前巻までは絶滅したはずのラッケやフェローグといった怪物との戦いが中心でしたが、本書ではエルフキナ人の叛乱軍を相手にした壮絶な騎馬戦が展開します。主人公のコノワは不思議な魔法のドングリのパワーで身を守られる恩恵を受けますが、生身の兵士達はそうは行かず血を流し腹から内臓を飛び出させるというショッキングなシーンも平然と描かれていて、魔法ファンタジーとはいえ中世のナポレオン戦争の趣を感じさせる戦の残酷さ虚しさが強烈に伝わり、決して生易しくはない本書の厳しく過酷な主題と性格を如実に示しています。最高の悪役〈影の女王〉はとうとう最後まで姿を現わさないのですが手下を使って密かに暗躍し邪悪な存在感を十分に感じさせます。〈鉄のエルフ隊〉は敵の手の内で踊らされている感があり、勝利とは程遠くまだまだ物語はこれからといえましょう。2009年7月本国で刊行予定のいよいよ本領発揮の期待がかかる続編が読める日を今から楽しみに待ちたいと思います。