一冊の漫画本から生まれる出会い、そのかけがえのない楽しみと喜びとを綴っていくシリーズ。今回は、多くても三話くらいで完結していた(と思います)これまでの連作エピソード型スタイルとは趣を異にし、一冊まるごと、「共に」と題した長編仕立ての話になっています。
1967年(昭和四十二年)に、手塚治虫が先頭に立って創刊された月刊漫画雑誌『COM(こむ)』。日本の漫画界に大きな影響を与えた雑誌を核として、“あきら書店”、“ねこたま堂”、そして“金魚屋”という三つの漫画専門古書店のそれぞれのエピソード、登場人物がつながっていきます。『COM』が本書の中心にあって、あたかも太陽の引力に引きつけられ、吸い寄せられる感じで、三つの話がひとつに合わさっていく。前半はそれほどでもなかったのですが、別々の話が収束していく後半から終盤にかけての展開が面白かった! パズルのピースが寄り集まってひとつの絵柄となる、そんな話の楽しさ、面白さがありました。
本書の中で紹介されていた『COM』創刊号での手塚治虫のことばがいいですね。<COM──それはCOMICS(まんが)の略。COM──それはCOMPANION(仲間・友だち)の略。そしてCOMMUNICATION(伝えること・報道)の略。つまり、まんがを愛する仲間たちに、まんが家のほんとうの心を伝える新しいコミック・マガジン──そんなことを考えて、わたしたちはこの雑誌のタイトルを「COM(こむ)」と決めた。(後略)> この言葉がいくつかの断片として配されたその真ん中に、「金魚屋古書店」に集う常連メンバーを描いた絵のコマがある見開き二頁。漫画が取り持つ縁、好きなものに夢中になる人たちの心に生まれる共感、あたたかみが伝わってきて、じんとしてしまったなあ。
それにしても、「金魚屋」のダンジョン(地下の書庫)に一度、私も行ってみたいなあ。入ったら、二度と出られなくなりそうだけど。