面白かったのは2ヵ所。
アダム・スミスが道徳哲学から出発したように、経済では人間の欲望のあり方をどのようにとらえ、それをどこまで抑圧していくのかを問う道徳や倫理の問題が必ずセットになっている、ということを改めて強く指摘していたあたり。経済では金銭が中心的な役割を果たし、そこには人間の欲望が深く関わってくるからということで、経済学を発達させたヨーロッパは、ユダヤ・キリスト教の伝統があり、欲望を抑制することが重視され、ヴェーバーもそういった視点から資本主義の精神が誕生したとみていた、と(pp.148-150)。
もうひとつは日本論。基本的に無神論的なというか、共同体至上主義的な日本社会では、欧米のように「神の見えざる手」に対する信頼は生まれにくく、また、日本の神話などをみても禁欲的ではない、と。だから、90年代にバブル崩壊を経験した後は、欧米のように「神の見えざる手」に対する信仰などないから、今回のサブプライムローンに関しても比較的傷が浅くてすんでいる、みたいあたり(p.171-)。
《日本人が信頼を寄せることができるのは、目に見えない神ではなく、人であり、物である》《(ヒルズ族などの)若い世代が断罪されると、それに納得し、自分たちの感じた疑いや不安には十分に根拠があったと感じるようになっていった》(p.227)。