日本の金融工学の第一人者による、金融工学にまつわる個人史です。エンジニアである著者が日本で金融工学研究を立ち上げるに至ったいきさつから、2005年の状況までを大まかにたどることができます。
前著『金融工学の挑戦』ではテクニカルな面を重視して大幅に削られ、サブプライム問題の後に出された本では、金融工学について言うべきことはこの本で書き尽くしたと語っておられるように、金融工学の内容自体についてはほとんど書かれていませんが、著者の思いがこの本には詰まっています。
あとがきに、「日本の富を自国に還流させようとする米国、"金融工学は単なる計算と批判する経済学者"、"金融工学は学問か"と揶揄する純正エンジニア、金融工学に理解を示さない金融ビジネスのリーダーたちと戦いながら、エンジニア・スタンダードでこの分野を切り拓いていく過程を、クロノロジカルに記したものである。」とあるように彼らについてかなり悪く書かれていて、著者の思いの程をうかがい知ることができます。あくまでも一エンジニアによる回想ですが、エンジニアの文化やものの見方がどういうものであるのかも、面白く理解することができます。一つの成功譚として、これからの世代にとっても読ませるものがあります。