労作であることは認める。日銀出身の秀才らしく、議論されていることも幅広い。外国の事例もいくつか研究している。しかし、だ。
幅広い議論が展開されているけれども、筆者の基本的な姿勢は、クロスセル推進と非効率決済分野の縮小である。それはその通りで、2000年代の邦銀は一斉に規制緩和の後を追いかけ、投信・保険のクロスセル、チャネルのリモート化、事務の効率化を進めてきた訳だけれども、2009年にもなってまだそんなことを言っていたんじゃいかにも古い。もうそういった課題は一巡して、次なる世界に対処しないといけないのではないのか。
グーグル、アマゾンと新たなキーワードが語られ、ネットの世界はデータ量もトラフィックも、21世紀当初とはケタの違う、新たな世界に突入している。自社のホストコンピュータを大事に抱え込むビジネスモデルは時代遅れ、とまではいかなくても、新たな付加価値を生み出しにくくなっている。
筆者が序盤で強調していたような、水平統合によるリテール金融のシェアアップ、これも一つの方向性だろうし、ネットアライアンスモデルのようなものが解になるかもしれない。それくらい刺激的な本だったら良かったのに、なんて思ってもないものねだりか。そういえばこの本を勧められた時、「ナナメ読みでいいから」と言われたのだった。