現在の金融危機をもたらしたのは、金融工学に問題があったからだという批判が昨今、よく聞かされる。しかし、著者は、金融危機の犯人は金融工学ではないと強く主張する。今回の問題は、金融工学の使い方を誤ったことから引き起こされたのであり、効率的に資産を運用するには金融工学は有用であるということを、あくまで、強調している。また、先物取引やファイナンス理論に基づく分散投資がなぜ、必要なのか。投資家にとってどういう意味があるのかを
改めて基本的なところからから、金融知識があまりなくても、わかりやすく説明している。
また、著者が「貯蓄から投資へ」という掛け声によって、個人投資家に、むやみに、リスクを取る投資を促進する政府等の姿勢を強く批判しているところは、本書でも重要な部分であろう。著者は、政府が掛け声をかける相手は個人投資家ではなく、金融機関であると言う。そして、個人投資家に適切な金融商品を提供していない、現在の日本の金融機関の責任は大きいと主張する。私も、メガバンク勤務経験者として自らの体験から、著者のこの主張には大いに同感できるところである。本書は、金融に関して、それほど、詳しくはないが、先物取引、分散投資、金融工学などが自分にとってどのようなものなのか知りたい個人投資家にはお薦めしたい1冊である。
なお、野口先生は、学者ですので、政府の「貯蓄から投資」へという考え方は同じでも、より、実践的な知識を得たい方には、小宮一慶著「お金を知る技術 殖やす技術 ”貯蓄から投資”にだまされるな」を一読されることをお薦めします。