江戸川乱歩著「宇宙怪人」のレビューにも記したが、昭和20年代中葉は「少年クラブ」や「少年」といった少年向雑誌が全盛であり、そこを舞台に江戸川乱歩と横溝正史の両作家が少年向推理小説の腕を競っていた。「金色の魔術師」は昭和27年に「少年クラブ」に連載された小説で、毎月の発売日を楽しみにしていたものだ。
児童向文庫本となった本書を半世紀ぶりに読み直してみると、少年の日の記憶がまざまざと蘇ってくる。内容については推理小説であり、初めての読者のために読んでのお楽しみ。
この小説の時代は、まだ戦争の傷跡が色濃く残っていて、空襲を受けた建物や土地が主な舞台になっている。また東京郊外の開発はまだ進んでいない。当時の時代背景が今読むと懐かしく興味深い。
本文庫は、発行に当たって現在からみて、いわゆる「不適切な表現」を省いたり、変更したとのことである。また、挿絵にはD.K氏の現代的な漫画風のものとなっている。現在の児童読者のためには、止むを得ないのかも知れないが、原作のもつ「おどろおどろしさ」が消えて少々残念である。
また、本小説の前年の「少年クラブ」に連載されて、同じ文庫に収録された「大迷宮」も面白い。これもお薦めする。