この本はかつて新潮社から単行本で刊行され、後に新潮文庫に収録された名著だ。実際にあった贈収賄事件をもとに書かれたため、出版当時大きな話題になった。
戦後、政治家をめぐる大型・小型の事件は数々あって、私たちはもう驚かなくなっている。ロッキード事件、リクルート、そして今また財界と政界の癒着が連日マスコミを賑わせている。だが、「驚かなくなっている」ことが異常であることを思い出させてくれるのがこの1冊。いま、青息吐息のゼネコンを舞台に、現職の総理大臣とそれをとりまく人間たちが演じた一大疑惑事件の全貌だ。
現職総理大臣をはじめ官房長官、通産(当時)大臣、次官、そして政府系企業の要職にある人物。物語の後半、事件は国会での証人喚問にまで発展するが、そこにいたってきわめて妥当かつ安易な決着がつけられる。
企業をとりまく環境が激変し、いまは通用しない事柄もあるが、政治不信の構図だけはまったく変わっていないのではないか? 今だからこそ、読んでいない人は一読を、かつて読んだ人も再読して「国民の政治参加」について強く考えるべき好著だ。