朝鮮族出身の中国人で新聞特派員として来日し、その後日本で大学教員となった特異な経歴の持ち主である著者が“金王朝の「真実」に迫る”というキャッチフレーズで出版したもの。
昨年10月朝鮮労働党創立65周年の軍事パレードでデビューした三代目金正恩をターゲットとしている。タイムリーな出版とも言えるけれども、「正体」や「血の秘密」などの扇情的なフレーズを章題としているが、韓国元政府高官所蔵資料なるものをベースに論を展開しており、それを証明する複数の資料・文献に当たっているわけではない。一言で言えば一面的で粗雑な事実選択、安易な分析、乱暴な結論付けが目立つ。
韓国は犠牲をいとわずに北に進攻した方が餓死者数十万を救うことになったはずとか、対話は無益で力で核放棄を迫るべきとか、米国のネオコンまがいの主張は頷けない。また戦車4000両、戦闘機1000機は脅威だとするような、質を無視し量のみで判定する北の軍事能力の過大評価もどうみても素人のレベルである。
戦前日本が植民地としていた朝鮮と満州で刊行された新聞研究では定評を得、李と竹山の二つの名前を使い分け、大学教員でありながら自分の会社を起業・経営している世渡り上手な著者が、自ら専門ではないと認めている新しい領域になぜいま参入したのだろうか。日朝中の三角関係の中で特異な立場にある故に、金王朝崩壊後の新体制参画にむけて予め布石を打ったというのは、穿ちすぎであろうか。
以上、かろうじて☆三つとしておく。