日本の中に、鎖国国家「江戸」が存在する近未来。病床の父に頼まれて、辰次郎は「江戸」へ赴く。そこで奉行所の一員として難事件に臨む。
近未来の鎖国国家「江戸」という設定は、おおげさにいえば時代小説に新たな可能性を開いた。なんでもありなのだから。時代小説の最大の制約は、歴史的事実を変えられないことだ。それが、何でもありになったのだ。新型生物兵器の開発や、引きこもりの問題を、時代小説に盛り込むことができるようになったのだ。
基本的にはユーモア小説なのだが、人情あふれる人間交流が胸を温かくする。ゴメスをはじめとした人物造形もうまい。それに、時代小説でちょくちょくお目にかかるジェンダー差別を、さらりと解消しているところも、確かな人権意識に支えられている。
ちなみにSFではマイク・レズニックが「キリンヤガ」で、小惑星の形でアフリカの一部族について同様の設定をしている。