萩・津和野を旅した時に、金子みすゞ記念館に立ち寄った。
彼女の家を移築した館内を歩き、そこここに飾られた詩を読んだ。
お風呂の詩、庭の詩、家族のこと、自分のこと。
彼女の部屋ではその静謐さに胸が痛んだ。思わずこの全集を求めた。
彼女の詩が騒がれだした頃、多分TVで「大漁」を聞いたのが出会いだった。
「浜は祭りのようだけど 海の底では何万の 魚の弔いするだろう」
驚きだった。その目線は、物心ついてからずっと「捨てなさい」と言われてきたものだったから。
子供は純粋とか、そういう陳腐な話じゃなくて、もっと単純なこと。
生き物を仲間だと思うこと。木も石も星も生きてると知ること。
意思の疎通を図る為の言葉で、人間同士が傷つけあうこと。
肌の色や国の違いで、或いはどちらの神様が正しいかと争うこと。
愛や嘘や癒しや矛盾、そういった全てを載せて、地球が回っていること。
蜂を見て宇宙を感じ、空を見て命を感じること。神に囲まれていること。
「いつまでも子供みたいな事を言ってないで現実を見なさい」
何度も言われたこと。だけど私にとっては掛け値なしの現実だった。
人間の世界からの疎外感に耐えられなくなりそうだった時に、やっと見つけた先輩。
それが金子みすゞだった。
彼女の年齢を超えて久しいが、私は未だに彼女の後輩だ。それが幸か不幸かは分からない。
それでもこの本を開く度に、ひとりじゃないことを感じる。