「金より大事なものがある」では当たり前すぎる。しかしそう言わなければならないほど利益至上主義が大手を振って通る世の中になりつつあるという危機感が本書の背後にある。それだけならまだしも、金が政治的権力に通じるならば不逞のやからが世の中を支配することになる。利益追求は資本主義の真髄かもしれない。しかもそれ以上といえるだけの経済システムは現存しない。公正な競争が前提にあって利益が追求されるのであれば無駄が排除されて効率的な経済運営につながる。ところが利益追求が至上の目的となり、それがさらに貪欲に転化しても正当化の議論が展開されている。
この筋道を明らかにするにはホリエモンや村上世彰を槍玉に上げるのが効果的である。本書ではそれに加えて福井日銀総裁の居座りとそれに加担する同類たちの不公正を指弾する。(本間税調会長は世論によって引き摺り下ろされた。)政府委員として自らの業界の利益誘導を図る宮内オリックス会長の我田引水ぶりも批判される。これらの事例は新聞を丹念に読む人にとってはそれほど目新しいことでないかもしれない。おそらく最も啓蒙的な事例はアメリカで起こっている金融肥大化現象(第4章「ウエルチ革命の帰結」)であろう。近く解禁となる「三角合併」問題はもちろんそれと無縁ではない。
本書の叙述はこのような世の中の変転と同様にいささか目まぐるしい。ガルブレイス、ベッカー、ウエーバー、ジンメルからリチャード・ポスナー、ロバート・パットナムまで多くの先人に頼って論旨が運ばれる。新書版200頁あまりではそれは無理な手法である。引用はなるべく抑えて自らの論理の筋道を手堅く展開した方が説得力が増すはずである。