まず、光子一粒ずつ二重スリットに向けて飛ばす実験で、スリットに検知器をつけないと、干渉縞が現れ、光は波として振舞うが、スリットに検知器をつけたとたん、光子をいくつ打ちこんでも干渉縞は消え、集団としても波の性質が消える。マッハ・ツェンダー干渉計を使った実験でも測定という行為を行うと光は粒子として振舞い、行わないときには波として振舞うと考えざるを得ない結果となることにびっくり。軽々しく光の波と粒子の二重性を都合よく使い分けてきたが、測定するかしないかによって波(実在性なし)であったり粒子(実在性あり)であったりするミクロの世界を破綻なく「解釈」しようとする様々な試み、いわば量子力学基礎論をその最前線まで解説した本。
有名なシュレーディンガーの猫等の多くの思考実験、測定する度に宇宙が別れるという多宇宙解釈等を、ほとんど式を使わず説明してくれるが、ついてゆくのが大変。宇宙がたくさんできてしまう多宇宙解釈にはなじめないが、それは問題点を指摘して著者は否定的。しかし、未来と過去が握手して現在の状態が決まるとする説を著者は有力視しているから、因果の概念を揺さぶる、これはまさに「哲学」。
興味津々の話が盛りだくさん。何となくミクロの世界の驚異を実感できる。ただ、どうしてもわからないのが、―1という確率。これは計算の筋道を示してもらいたかった。
それと、現在は分子や原子の姿を捉えるまで「顕微鏡」が進化している。あれは電子の雲を視覚化したものと私は理解するが、そういった「測定」結果はどう説明するのか、知りたく思う。